Diary 20.04.22-20.05.25

BECV出品作品

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人に会う約束がないから、自分の身体のタイミングで起きれば良い。この家の庭が気に入って入居を決めたのに、4年半住んでうちに生える雑草の移ろいも知らない。毎年ナガミヒナゲシが可愛らしい様子で猛威を振るうことだけは木津いいていた。そのあとにドクダミの強い香りがやってくる。そうすると庭は夏になる。季節は寒さを引きずる春をわたり、駆け足に夏に向かう。

緊急事態宣言が出された3日目の4月19日。散歩がてらにカメラを持って近所に出かけた。コデマリ、ユキヤナギ、ハゴロモジャスミン、フジ。町内会の掲示板に「つつじ祭りは中止します」の張り紙。

今年はうちの庭のつつじを祭ろうか。ベランダでランチ時のビールもいい。花が落ちるのを今年こそ見届けるのだ。

散歩から帰って、写真をラップトップに取り込む。頬杖をつきながら、一枚一枚露光を調整して「保存」を押す。この時撮った写真は数年先ののちに、きっと感慨深く見るのだろう。仕事がない。あるにはあるが家から出られないので好きに過ごすしかない。時間だけがあるから写真を撮って、レタッチして、整理できる。私のデジタル一眼レフカメラはいいカメラだが、あまりコンピューターが賢くない。レタッチでフォローできてしまうがゆえに、手のかかる奴だ。大学生の時はそれで良かった。それが良かった。家から出られるようになったら、また元の生活に戻ったら、私はカメラからまた離れてしまうだろうか。

4年半住むこの家の移ろいを、見つめることがあっただろうか。

2020年5月25日(月)東京都の緊急事態宣言、解除。

6月から、朝7時の電車に乗って隣の県に通う仕事が再開する。

 

2020 三木麻郁