展示期間中に、オルゴールカード制作のための誕生に関するデータを鑑賞者から募集した。
寄せられた誕生のデータからオルゴールを作り
会期中に新たなカードを付け替えた。
付け替えのために取り外されたカードの環は、壁に飾られて行く。
(掲示したテキスト)
生まれた瞬間の星空をオルゴールで奏でる「誕生の讃歌」
この世に生をうけたこと、このタイミングで生まれ、また死に行くこと
そんな命ばかりで、世界ができていること
あなたの、または大切な誰かの、誕生をオルゴールでお祝いします。
その人の誕生日時、場所の情報を、お寄せください。
世界にたったひとつのオルゴールカードを制作します。
年齢によってカードの大きさが決まり、音楽の速度が変わります。
制作されたオルゴールは、群馬近代美術館で2015年3月22日まで演奏することができます。
Link : Google フォーム「誕生の讃歌 データ入力」
http://goo.gl/forms/URktdMNPTi
この呼びかけに36名から反応があり、そのうち15名のオルゴールを会期中に制作し、入れ替えた。
オルゴールには、既に亡くなった人のものもある。
円の環の大きさはその人の年齢を表している。大きな環ほど年齢が高く、小さい環ほど年齢が低い。
During a display period, I raised data about the birth for musicbox card production from a person of appreciation. I made a music box from data of sent birth and changed a new card during a session. The loop of a card removed for a change is displayed on the wall.
The size of the ring expresses the age of the person. The age of the person is high so that a ring is big and is young so that a ring is small.
(作者解説)
制作のきっかけは、作家の従姉妹が、生後3か月満たずして、亡くなったことだった。
生まれた時からひときわ身体が小さかった。顔をくしゃくしゃにして、ノズルから酸素を吸っていた記憶がある。病院に集まった親族の誰よりも常に全力で一生懸命生きているように見えて、なぜだか神々しくも思えた。たとえ数十日の命でも、彼女がこの世に生まれ、私たちの目の前に一瞬現れてくれたことは、絶対的に意味があるに違いない。10 代だった作家はぼんやりそう思った。少なくともその直感は作家本人にとっては間違っていなかった。彼女の小さな生を大いに祝福する方法はないのだろうかという願いが、本作に帰結して世に出たからだ。
人間同士の愚かな殺し合いが毎日どこかで起きている。自ら生を断つ人もいる。それぞれに事情があるのかもしれない。けれども、それにしても、あまりに生を軽視していないだろうかと私は思ってしまう。あの時の小さな新生児の方は確かに全力で生きて、人生を全うした。
この展示のシステムは、誰かの生によって作られた音楽を、その人を知らない誰かが演奏することで、彼らの意図とは無関係に互いの誕生を祝う構図である。それぞれの音楽には個性があり、不協和音と安定しないテンポからは不思議と主旋律らしきものが聞き取れる。またそれぞれの音楽の差異は、カードの主そのものを形容しているようにも思える。
群馬近代美術館でのこの展示は、オルゴールの美しい音色が、展示会場の遠くにいてもよく響いていた。
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