「醤油画」という技法の存在が現代美術作家・小沢剛によって再発見された…
この技法の歴史は古く
日本人の藝術文化と食卓に寄り添うようにして発展し
近現代の有名なアーティスト達も、その技法を用いて多くの名作を残している…
この技法の材料となる醤油は、日本人が慣れ親しむ調味料のひとつとして
いつも暮らしの側、食卓の上にあった。
安価で手に入れやすかったことから、醤油画は古くから親しまれ、
階級や職業に関係することなく、多くの日本人によって名作が生み出されてきた。
いまや「醤油民藝」はひとつの藝術ジャンルの地位を確立していると言っても過言ではない。
ある暑い夏、私は醤油とうどんの町、四国香川は坂出市を訪れた。
古い商店街や山に囲まれた坂出特有の地形と醤油工場の香りは
東京から来た私に新鮮な印象を与えた。
そして、環境・動機ともに、醤油画こそがこの地での営みに相応しいと思われた。
幸い持ち運びも容易にできるこの材料は、スケッチに適している。
私はこの町を散策し、句を詠んだ。
出会った風景や町の人々、また醤油にまつわる妖怪絵図を描き留め、
時には落書きや日記のようなものをしたためるなどし、
一夏を気の向くままに過ごしたのだった。
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