本展「HELLO YOSHIWARA〜吉原商店街に出会おう!〜」は、静岡県富士市にある吉原商店街が舞台だ。商店街はなかなかにユニークな店主たちが店を切り盛りしている。アーティストはあくまで旅人としてこの宿場町・吉原に立ち寄る。そして店主を主役にした作品を作る、という使命を請け負った。
私は「東海道表富士」店主・西川卯一氏とペアを組むことになった。最初に、西川氏が「吉原商店街店主による街歩きツアー:富士山の先端を辿る」と題して、「田宿川」沿いを歩くツアーを2023年10月1日に催す。「田宿川」は吉原商店街のすぐそばを流れる富士湧水で、田子ノ浦に注がれる。随所で解説される西川氏の言葉から、私はその根底にあるメッセージについて想像を膨らませ、本作の構成を考えた。富士吉原には7日間滞在し、取材を行った。
飲用湧水を蒸留させて作った氷が、西川氏コレクションの様々な質の火山岩の上で、ゆっくり溶けていく様をご覧いただく。氷は、田宿川沿いを歩いていて心惹かれたポイントで見つけた街の凸凹(河川標、石彫の橋銘板、石垣に埋もれている溶岩、足元の特徴的なタイルなど)を、セラミックで型取り、それを原型にしたシリコンの製氷機で作っている。蒸留した湧水で作った氷は不純物が取り除かれ、菊のような気泡とクリスタルガラスに見まごう透明感が生まれる。
溶岩と氷を配置するテーブルには、ドローイングを青焼転写したクロスを敷いている。ドローイングは、西川氏がアテンドしてくれた田宿川周辺の地図と、そこに私が心惹かれたいくつかの見所、そして西川氏の話し言葉が書き入れられ、記憶・記録として、また湧水が流れる先の田子ノ浦の海のイメージを重ねて、青焼転写を取り入れた。転写作業は富士の太陽で行った。
川の取材中、軽やかに街に響く水音の存在に気がつき、しばし耳を澄ませた。この水音の具合を聴いて、ここは水量が多いな、水源はこちらだな、という手掛かりを得ながら歩くと、さらに富士先端を辿る街歩きは一層奥深いものに感じられ、私は西川氏のガイドを録音する予定で持参していたピンマイクを使って、水音を録音した。会場では9箇所で集めた水の音源を流した。
富士の水が、富士の溶岩をつたって吉原の宿場町に注ぎ、田子ノ浦にまで繋がっていることを暗示する。タイトルは、全て古歌に使われた富士の水を表す言葉を再構成し、借景する思いで名付けた。
HELLO YOSHIWARA 〜吉原商店街に出会おう!〜 2023 EXHIBITION 出品作品
2023
制作協力:吉原中央カルチャーセンター、西川卯一
撮影:スズキトオル
インスタレーション:蒸留した田宿川湧水、溶岩、ガラス皿、布にサイアノタイプ
ドローイング:紙に、鉛筆、色鉛筆、水彩、ペンなど
展示概要
会期:2024年1月12日(金)-28日(日)
開廊時間:11:00〜20:00(月曜休廊・最終日のみ18時終了)
会場:静岡県富士市吉原2-9-25(旧「ライフエレクトロニクス岳南」)、吉原商店街エリア全域
展示関連イベント
◉アーティストクロストーク
1月12日(金) 18:00〜19:00 三木麻郁×郡司淳史
1月13日(土) 13:00〜14:00 安藤智博×Nozomilkyway
◉特別トーク:店主が主役のアートプロジェクトって?
1月19日(金)19:00〜20:30
会場:Bird old pizza house(富士市吉原2-11-6 MARUICHI BLDG 2F ※展示会場斜め前の建物です)
予約不要・参加無料
ゲスト:櫛野展正(アーツカウンシルしずおか チーフプログラム・ディレクター)
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